MARUGOTO REPORT 農業まるごとレポート

自然との共生を感じられる憩いの場(足立区・足立区都市農業公園)

 東京都足立区鹿浜の荒川沿いの一角に足立区都市農業公園はあります。農業と自然を体験できるこの公園は、昭和57年に区制50周年記念事業として整備が進められ、昭和59年10月に開園しました。この公園は、「自然と遊ぶ、自然に学ぶ、自然と共に生きる」をテーマに運営されており、園内の各施設やさまざまなイベントもこのテーマに乗っ取ったものになっています。

 この公園にはどのような施設があり、どのような体験ができ、どのような人が訪れるのでしょうか。

農と自然と歴史を体験できる!

 正門を入って最初に目に留まるのが、都市農業交流館です。ここは案内所と野菜の直売所を兼ねた管理棟です。施設内には「ビジターセンター」と呼ばれる案内所もあるので、最初に訪れた方はこの建物で園内の概要を知っておくと良いでしょう。園内の奥に進んでいくと桜や梅などの樹木が植えられている広場があり、春の花見シーズンになると多くの方で賑わいます。広場の先には様々な施設や水田、畑があります。

足立区都市農業公園の地図。

 まず目につくのは芽葦屋根が特徴の古民家です。これは、江戸時代末期に今の足立区で建てられた農家の家屋を移築したものです。建物を見学すると、江戸時代の足立の人々の暮らしを知ることができます。さらに古民家の目の前には水田と畑があります。水田では「うるち米」と「もち米」を無農薬で育てています。収穫の時期になれば稲穂がたくさん実り、田んぼ一面が黄金色の美しい風景へと姿を変えます。畑ではレタスやニンジン、サツマイモ、ジャガイモなど様々な種類の野菜や、綿花、小麦などあわせて常時約30種、年間約60種をお米と同じく無農薬で育てています。畑で育てられた野菜は、園内の直売所「とれたてマルシェ」で販売されたり、レストハウス「キッチンとれたて」の料理に使われたりしています。私もこのレストランでカレーライスを食べたのですが、ジャガイモとニンジンが芯まで甘く、カレーライスのルーとよくマッチしていてとても美味しかったです。畑の奥に進んでいくと温室が施設内にある「人と自然の共生館」と、染色体験ができる「工房棟」、江戸時代に農村だった足立を想起させる農機具を展示している「昔の農機具展示室」があります。

高速道路の高架の目の前にある足立区都市農業公園。

 「人と自然の共生館」は熱帯植物やハーブなどの様々な植物と足立区に生息している生物を展示しており、人と自然との繋がりを体感できる場所となっています。私が訪れたときは温室の中で育てられている、バナナについて自然解説員の丁寧な説明を受けました。「工房棟」では様々なイベントが行われており、これまでウコン・玉ねぎ・梅・桜・落ち葉・びわなど、季節の野菜や植物を使った染色体験を実施してきました。実際に染色された布を見せてもらったのですが、それぞれの植物の色がよく反映されていて綺麗な仕上がりになっていました。染色体験は定期的に開催されているそうなので、興味のある方はHPをチェックしてください。より積極的に活動したい方はボランティア活動に参加するのも良いでしょう。足立区都市農業公園ではハーブボランティア・有機農業ボランティア・花壇ボランティア、植栽ボランティアを随時募集しています。

 このように、農業や自然、歴史を直接体験し、感じることができる施設が足立区都市農業公園にはたくさんあります。

レストランの生ごみや米ヌカで堆肥を作っています。
足立区都市農業公園にある畑。
「人と自然の共生館」にある大きいバナナの葉。
足立区の方々から寄贈された農機具たち。

イベントもたくさん!

 足立区都市農業公園では年間1100回以上ものイベントが開催されており、ハーブや生きもの、昔遊びなど内容は様々ですが、農業公園ということもあり「野菜の収穫体験」や「おいしい野菜のつくり方教室」、「田んぼでお米をつくってみよう」などの農業体験が人気です。4月から11月までほぼ毎月一度は収穫体験ができ、中でも秋に実施するサツマイモの収穫体験は朝から行列ができるほど大人気だそうです。「田んぼでお米をつくってみよう」は、お米を稲の種まきから収穫、脱穀までほぼすべての過程を体験できるため、約1年(全7回)と長期間であるにもかかわらず人気のイベントになっています。さらに、2019年新たにスタートした通年プログラムとして「ベテラン農業者に学ぶ有機農業実践教室」というものがあります。こちらは土づくりから収穫まで一年を通して、茨城県のプロ有機農業者に指導してもらいながら実際に作業を行うというものです。高校生以上で、有機農業で就農を目指す人もしくは有機農業に興味がある方が対象となっています。

東京都心にありながら、農業体験を楽しめる公園です。

私たちの生活を支える大切なもの

 足立区都市農業公園を実際に訪れて、都会の中に農業と自然を直接体験できる場所があるのはとても良いことだと思いました。現代の都市で暮らしている子どもは、普段食べている野菜がどこでどのように作られているのかほとんど知らないことも珍しくありません。足立区都市農業公園で行われるイベントに多くの子どもたちが参加することで、食や農業、自然に対して関心を持つきっかけになるかもしれません。気軽に農業や自然に触れる場所は都内にはなかなか無いので、普段の仕事や通勤ラッシュなどでストレスが溜まっている大人も是非訪れてみてはいかがでしょうか。農業と自然という私たちの生活を支えている大切なものを感じることができるでしょう。

足立区都市農業公園 プロフィール

  • 住所:

    東京都足立区鹿浜2-44-1

  • 公式ホームページ:

    http://www.ces-net.jp/toshino/

  • 電話番号:

    03-3853-4114

  • アクセス:

    西新井駅西口からはるかぜ(4号)東武バス西07「鹿浜都市農業公園」行き乗車 鹿浜都市農業公園」下車徒歩0分
    ※他にもいくつかの行き方があるので、公式ホームページも合わせてご覧ください。

小辻 龍郎

アグリドットトーキョー編集部。元々農業とはあまり縁がない生活をしていました。農業や食、自然の分野で世の中をより良くしていきたいと思い、大学に入学してから農業サークルなど農業に関する様々な活動に取り組んでいます。都市農業を通じて農業の現場や課題が身に染みて実感中。最近ハマった野菜はトウモロコシ。

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