MARUGOTO REPORT 農業まるごとレポート

DeST2018取材レポート③ 新規就農のススメ!(舩木翔平さん)・暮らしと農の近い町国分寺(南部良太さん)

2018年12月8日、明星大学デザインセッション多摩(DeST)2018が開催されました。ぽてともっとのメンバーがセッションに参加しながら、その様子やお話の内容をレポートします。①・②・④の記事は、以下からご覧ください。

① 農×政治!?~時代の変化に対応するのではなく、変化を作り出せ!~(高橋金一さん)
② 農の力で多摩は世界一住みたい都市になる!(小野淳さん)
③ 新規就農のススメ!(舩木翔平さん)・暮らしと農の近い町国分寺(南部良太さん)
④ 地域×デザイン!(江藤梢さん)・生ゴミを活用したコミュニティー農園(佐藤美千代さん)

舩木さんは八王子での新規就農の取り組みについて、南部さんは国分寺で行われている「こくベジ」の取り組みについて詳しく説明してくださいました。

新規就農のススメ!(舩木翔平さん)

舩木翔平さん

舩木翔平さんプロフィール

2010年東京農業大学卒業後、2012年に八王子・堀之内で新規就農。現在は、八王子市内の農地で「東京いちじく」の栽培に取り組んでいます。

就農に至った経緯

舩木さんは、高校・大学時代は農業ではなく林業を専門とされていたそうです。そのため、当時は農業という職に就くということは全く考えておらず建築関係の仕事に就こうと考えていらっしゃいました。しかし、以前から町の活性化に関わりたいという気持ちがあり、お手伝いとして参加した農業体験イベントに魅力を感じたことから大学卒業数ヶ月前に農業という職業に就くことを決められました。

農業をすると決めたものの、何をすればいいのか全くわからなかったため、舩木さんは八王子市の農林課を訪ねました。教えてもらったのは、まずは研修を受けなけければならないということ。そこで、ご両親の同級生の農家さんのところで約2年研修を受けました。

就農後は、ただ農業をするだけでなく、様々な新しい方法を試みているといいます。1つ目は、農業体験です。農業体験・イベントをしようと考えても10人、100人受け入れるとなると1人ではなかなか大変ということで運営会社FIOを立ち上げました。また、2018年一般社団法人畑会も設立しました。ここでは、農業体験を行いたい!という生産者の方をサポートを行なっていらっしゃいます。

2つ目は、いちじくの栽培です。現在の畑4000平米の畑を順次イチジクに変更し、「東京いちじく」として2018年から販売を開始しているそうです。

新規就農の6つのステップ

舩木さんは、新規就農には6つのステップがあるとおっしゃっていました。

STEP1 研修場所探し

東京都農業会議で紹介していただけます。

STEP2  農地探し

古くから農地を持つ農家さんの多くは、自分自身で利用しきれない条件の悪い農地から順に手放すため、農業生産に向いた農地に出会うことは簡単ではありません。しかも、作付する品目や農法によって、必要とする農地の種類は様々です。このため、なおのこと農地を確保することは難しくなります。このような情報はネットに出て来るものではないので、農家さん、親戚、家族などに話をして直接動き回るしか方法はありません。舩木さんの場合、八王子市では新規就農の前例がなかったため、少し余計に時間がかかってしまったそうです。

STEP3 書類の手続き

書類手続きはそんなに難しくありませんが、各市区町村の農業委員の方から5年・10年後の計画や、どうやって続けていくのかなどと様々なことを聞かれます。

STEP4 住居探し

一応STEP3までで新規就農はできますが、新規就農の後にはまだいくつかの壁があります。その大きな壁の1つがこの住居探しです。農業の世界では一般的に、八王子で新規就農をするなら八王子に住むといったようにその土地に住むという条件がついて来ます。しかし、もともと他に仕事や収入が無いと、その資金をどう確保するのかとても大変です。

STEP5 資金

農地を借りるだけであれば年間数万円ですが、機械や野菜の調整場も必要になってきます。

STEP6 売り場

売り場選びも重要です。スーパー・百貨店・飲食店によって必要な出荷規格が全て変わって来ます。

「人」が継続的な農地運用につながる

舩木さんは最後に、「畑はゼロからなんでも出来ます。更地から農業体験のイベントもできるし、野菜も作れます。もちろんそこには農業を目的として人が集まってきます。しかし、やはり次の意識としては、その場所の雰囲気、人に惹きつけられて来るということもあると思います。気づかぬ間にだんだんとその「人」が目的となり、それが継続的な農地の運用につながることもあるのです。今は都市農業という括りで考えていますが、都市に限らずそういったコミュニティーがもっとできていったらいいですね。」とおっしゃっていました。

暮らしと農の近い町国分寺(南部良太さん)

南部良太さん

南部良太さんプロフィール

農業デザイナー。中心的なメンバーのお一人としてこくベジプロジェクトの運営に携わっており、農業デザイナーの仕事の傍らこくベジの集荷・配送も行っています。

こくベジプロジェクトとは

こくベジプロジェクトとは、国分寺の農家さんが作った野菜を地域の飲食店で提供するという取り組みです。2015年頃、国分寺市の発案から始まりました。このプロジェクトの目的は、農家さん、飲食店さんがこくベジを通じ地産地食を目指すことにあります。行政や農家さんだけでなく、地域の方々が一緒になって取り組んでいることが特徴です。

こくベジの3つの取り組み

(1) つなげる:こくベジの配達

こくベジは、「つなげる」ということをテーマに、2015年から地元の飲食店を対象に配達を行なっています。はじめは、4軒の農家さんから10店舗の飲食店さんに野菜を届けていました。現在は、10軒の農家さんから100軒あまりの飲食店さんに野菜を届けているそうです。

南部さんはこの配達の面白い点は、目の前にある食材が実際に形になる場を見ることが出来る点であるとおっしゃっていました。

(2) 楽しむ:こくベジのじかん

「楽しむ」取り組みでは「こくベジのじかん」というマルシェを開催しています。この「こくベジのじかん」では、今までにないような野菜の販売方法を行い、野菜のワークショップを中心のマルシェを開催しています。デザイン性があり、見て楽しむことができるような野菜販売にこだわっているそうです。

「こくベジのじかん」の野菜販売

ぽてともっとでは、2018年12月16日(日) cocobunjiプラザで行われた“こくベジのじかん”に参加しました。これについても詳しくレポートさせていただいておりますのでぜひご覧ください!

(3) 広がる:トマトフェスタ

国分寺のトマトは7月に沢山採れるため余ってしまうということで、トマトフェスタを開催しました。約1週間、お店の方がこくベジを使った特別なトマト料理を提供してくださるという企画です。

誰もがこくベジを育てるプレーヤー!

最後に南部さんは、「誰もがこくベジを育てるプレーヤー」だとおっしゃっていました。いま国分寺では、様々な人がこくベジを通じて自分たちのやりたいこと・叶えたいことに取り組んでいます。このように色々な人がこくベジに関わり育てているということが、こくベジの魅力ではないかとおっしゃっていました。

DeST2018 プロフィール

  • イベント名称:

    明星大学デザインセッション多摩(DeST)2018

  • 開催日:

    2018年12月8日

森 柚香

アグリドットトーキョー編集部。津田塾大学学芸学部英文学科所属。大学入学後、農業とはあまり関わりの無い生活を送っていましたが、「農業サークルぽてと」に入会したことをきっかけに農業に興味を持ちました。趣味はダンスで、大学では「ぽてと」以外にベリーダンス部・ラーメン同好会に所属しています。アグリドットトーキョーでは今までの知識も活かしつつ、新しいことをどんどん吸収していきたいと考えています。

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