MARUGOTO REPORT 農業まるごとレポート

地域の野菜を地域の人々へ(国立市・株式会社エマリコくにたち)

 まだ暑さの厳しい8月中旬、一台のワゴン車で立川方面へ向かいました。今回お話を伺ったのは、株式会社エマリコくにたちで集荷を担当している大石祐輔さん。実際に一緒にワゴンに乗り込み同行させていただきました。

株式会社エマリコくにたちとは

 株式会社エマリコくにたち(以下エマリコくにたち)は、2011年に誕生しました。街の中にある農業を次世代につなぎ、都市市民の食卓を楽しくすることを目指す東京野菜の流通企業です。東京に農業というイメージはないかもしれませんが、実際には農業生産者はたくさんいます。代表取締役社長の菱沼勇介さんは、事業を続けるにつれて、「大都市東京にこそ農業が必要だ」と考えるようになったそうです。

(本メディアでは過去に代表取締役社長の菱沼勇介さんにも取材を行いました。ぜひこちらの記事もあわせてご覧ください。https://morita-baron.com/v-013/

 東京の市街地に隣接する農家さんで採れた青果物を、背景にあるストーリーとともに新鮮なうちに流通させたい。そのためにエマリコくにたちは主に4つの事業を行なっています。「直売所事業」・「飲食事業」・「卸売事業」・「運営受託・コンサル事業」の4つです。今回は集荷を通じて主に直売所事業・卸売事業に焦点を当てたいと思います。

まちなか農業流通モデル

集荷の朝は早い

 取材当日は午前8時頃に国立市のしゅんかしゅんか(エマリコくにたちが経営する直売所の1つ)を出発し、立川方面に向かいました。出発前から準備で忙しく、早い日は6時半には出勤するそうです。直売所や飲食店の在庫状況を確認しながら、どの農家さんの何がいくつほしいかなどを考え、集荷リストを作成したり、物を仕分けしたりします。農家さんの場所や準備できている時間を考慮し、効率良く回れる順番を考えます。エマリコくにたちは3つの直売所と3つの飲食店を運営しています。直売所の各店舗の規模は5〜25坪ほどで、全て駅前路面型・商業施設型の展開にこだわっています。野菜の美味しさを決める大きな要因は「鮮度」であるからです。近くの畑で採れた新鮮な野菜を、手に取ったその日のうちに食べて欲しいという想いがあります。さらに、2018年5月には都心への流通網の構築も開始しました。スーパーマーケットや百貨店、社員食堂などにも多摩エリアの美味しい農産物をお届けしています。

いざ集荷へ

 作成したリストの順番に沿って農家さんを伺い、採れたての野菜を集めていきます。野菜だけではなく、果物や花、烏骨鶏の卵を出してくださる方もいらっしゃいます。この日は15軒の農家さんを2時間ほどで伺いました。立川駅周辺しか知らなかった筆者は、立川市にも農家さんがたくさんいらっしゃること、広大な畑が広がっていることに驚きました。集荷は、品物と伝票が入ったカゴを車に運び、新しいカゴを農家さんの元に置いてくるという流れで進んでいきます。エマリコくにたちが集荷・買い取りを担っているため、農家さんは生産に注力できるようになっています。集荷に同行させていただいて気づいたことは、野菜を集めながら、農家さんへの挨拶・コミュニケーションを欠かさずに行うということです。この事業がエマリコくにたちと農家さんとの間に信頼関係の元に成り立っているのだと感じました。

(何軒かの農家さんに許可をいただき写真を撮らせていただきました。)

カゴに入った新鮮な野菜
大粒な葡萄
立川市内の広大な畑

 全ての集荷が終わった後、集めた品物を立川市にある「のーかる」という直売所に運びました。午前11時の開店に向け、品物を車から降ろしたり、陳列・値札づけをしたりと大忙しです。店内には野菜や果物などの青果物だけでなく、乳製品や肉、加工品など多種多様な商品が並びます。珍しい商品もあり、楽しくお買い物ができる店内になっています。また、店内には生産者の顔写真や地図が載っているため、お客様はどこで誰が作った野菜なのかを知ることができます。午前11時の開店と同時に多くのお客様が来店され、地域の方々に愛されている直売店の様子を見ることができました。

のーかる農家さんMAP
生産者の顔写真が載っているため、安心して買うことができる。
陳列される新鮮な野菜
青果物以外の商品も多数取り扱っている。献立の幅が広がりそう。

エマリコくにたちが目指すもの

 エマリコくにたちは青果物を集め、売るだけではありません。生産者のストーリーを大切に消費者の方々に安心・安全な品質を届けています。生産者の名前・写真が出るということは、品質を保証することに繋がります。

 大石さんは、農地をどう残していくかを考えていくことが大切であるとおっしゃっていました。農地が減り、農を身近に感じることが少なくなった現在、エマリコくにたちは、地域の生産者と消費者を繋げる架け橋となっています。

株式会社エマリコくにたち プロフィール

  • 住所:

    〒186-0004 東京都国立市中一丁目1番1号

  • 電話番号:

    042-505-7315

  • 公式ホームページ:

    http://www.emalico.com

吉野 飛鳥

一橋大学経済学部所属。群馬県出身で、幼い頃から農業が身近にある生活を送っていました。東京で一人暮らしを始め、農業サークルぽてとに入ったことをきっかけに都市農業にも興味を持ち始めました。自分を野菜に例えるとネギ。

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