MARUGOTO REPORT 農業まるごとレポート

世界都市農業サミット~練馬が誇る都市農業を世界へ発信~ (東京都・練馬区)

 都市の中に農地が点在しているという、世界的に見ても非常にユニークな環境な地域である東京。特に人口が集中して都市化が顕著な東京都23区の中で、練馬区は最も農地が残っている場所です。環境保全や防災などの面で都市部における農地の存在が重要視されている中、練馬区では2019年11月29日(金)から12月1日(日)まで「世界都市農業サミット」というイベントが開催されます。練馬の都市農業の特徴やイベントの概要、開催の意義などについて、練馬区世界都市農業サミット担当課に伺ってきました。

練馬の都市農業の強み

 練馬区は東京都区部の農地(526.9ha)のうち約4割(215.6ha)を占めており、住宅地の至る所で盛んに農業が営まれています。練馬で栽培されている代表的な野菜としては、都内で一番の生産量を誇るキャベツや江戸東京野菜の練馬大根などが有名です。野菜の栽培が盛んなだけでなく、果樹の摘み取りなどができる観光農園「ねりま果樹あるファーム」や農業体験農園が数多くあります。なかでも農業体験農園の数が17ヶ所(東京都全体では87ヶ所(2016年度))と盛んに行われており、市民の方々が気軽に農体験をすることができ、かつ農業者は天候に左右されず安定した収入が見込めるという特徴もあります。このように多様な農業経営がされているため、練馬の農業従事者の面積当たりの収入は1ha当たり524.4万円と都内の他地域(都内の平均収入は295万円)に比べて高い傾向にあります。

 都市部で農業が産業としてしっかりと営まれている練馬区の都市農業は、世界に誇れる素晴らしい価値と魅力を持っているのです。それを練馬区民に再発見してもらい、また都市農業の価値と魅力を世界で共有されることを目的として、世界農業サミットが開催されることになりました。

練馬大根

都市農業を盛り上げていくための各種イベント!

 三日間のサミット期間中は様々な企画が催されます。主な内容として、今回のイベントに招聘された五つの都市(ニューヨーク、ロンドン、ジャカルタ、ソウル、トロント)の代表の有識者の方々が都市農業についてディスカッションを行う「国際会議」、練馬大根の収穫時期に合わせて行われる「練馬大根引っこ抜き競技大会」、練馬の野菜や加工品など美味しい食べ物などが販売される「ねりマルシェ」、国際交流イベントの「ねりまワールドフェスティバル」が挙げられます。国際会議では分科会とシンポジウムの二つに分かれています。11月30日の分科会では、農業経営、農業がコミュニティに果たしている効果、まちづくりと農地の関係について招聘された有識者の方々と深掘りしたディスカッションが行われる予定です。12月1日のシンポジウムでは主に区民の方々に対して、招聘された五つの都市で行われている農業の紹介や都市にある農地農業が非常に貴重な存在であることの認識を共有して、宣言がまとめられる予定です。分科会とシンポジウムはどなたでもご自由に参加できるので、都市農業に興味のある方や、世界の都市農業を知りたい方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

招聘された5か国の都市のひとつであるニューヨーク市で行われている農業の特徴 
(引用:練馬区世界都市農業サミット担当課)

 また、昨年開かれた世界都市農業サミットのプレイベントで実施された「みんなde農コンテスト」で選ばれた企画3点に関する発表もあります。区内の中高生やNPOが一年間かけて取り組んだ内容は、どれも練馬の農業の活性化に繋がる有意義なものになっています。

練馬の都市農業の将来像とは

 世界都市農業サミットの開催趣旨の一つでもある「都市農業の発展」を実現するには、都市農業が現在抱えている様々な課題をクリアする必要があります。練馬区内でも後継者不足や農地の利用方法、経営面などで課題や向上していくべき点がまだ多く残っています。そのような中、練馬区は約10年前から、市街化区域に農地を持つ都内38自治体と共に農水省や国交省に働きかけて都市農地の保全に関わる制度の改正を要望する活動を行っています。

 その結果の一つとして「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」が制定され、練馬区でも農地を保全しやすくなりました。この法律をもとにして練馬区の都市農地を保全すべく様々な取り組みを行っています。

 練馬区では農業を「支える人材」を育成する「練馬区農の学校」を開校したり、農地を貸借したい人たちのマッチングを促進したりするなどの政策を行っています。また、世界都市農業サミットを通じて各国の都市と情報共有のネットワークを構築して、双方の行政や農家、研究者が交流できるような枠組みを構築していきたいとのことです。

練馬区農の学校の様子 
(引用:練馬区都市農業課)

 こうした取り組みを続けていくことで練馬区の都市農業は、地域の人たちにとって大切な場の一つとなり、多面的な要素がつまった素晴らしい産業に生まれ変わっていくことでしょう。

都市農業の可能性はまだまだたくさんあります! 
(引用:練馬区都市農業課)
今回取材対応をしてくださった毛塚さん。世界都市農業サミットについて詳しく説明してくださいました。

世界都市農業サミット プロフィール

  • 練馬区ホームページ:

    http://www.city.nerima.tokyo.jp

  • 開催日程:

    2019年11月29日(金)~12月1日(日)

  • 開催場所:

    練馬文化センター、Coconeriホールなど

小辻 龍郎

アグリドットトーキョー編集部。元々農業とはあまり縁がない生活をしていました。農業や食、自然の分野で世の中をより良くしていきたいと思い、大学に入学してから農業サークルなど農業に関する様々な活動に取り組んでいます。都市農業を通じて農業の現場や課題が身に染みて実感中。最近ハマった野菜はトウモロコシ。

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