MARUGOTO REPORT 農業まるごとレポート

四季折々の旬野菜を届ける農園(西東京市・やすだ農園)

 西武新宿線田無駅から北に15分ほど歩くと、やすだ農園が見えてきます。やすだ農園は東京都西東京市において家族で昔ながらの露地栽培を営む農家さんです。多品目少量栽培で馴染みのある野菜だけでなく、カリフローレやスティックセニョール、ロマネスコといった少し珍しい野菜も育てています。今回は、そんなやすだ農園について紹介します。

 やすだ農園は大正時代に始まり、現在に到るまで約100年の間先祖代々大切に受け継がれてきました。現在は、直系の子孫に当たる安田加奈子さん、結婚を機に就農なさった安田弘貴さんとそのご家族でこの農園を経営されています。今回は安田弘貴さんにお話を聞かせていただきました。

ビニールハウス内の野菜たち

四季折々の旬の野菜

 前述したように、安田弘貴さんは奥様である加奈子さんとの結婚を機に就農しました。兼ねてから加奈子さんのやすだ農園に対する想いを知っていたということもあり、会社勤めをしていた頃から結婚後は就農することを心に決めていたそうです。

 ご夫婦の熱い想いのもと作られた野菜は味、品質が評価されファンも多くいます。お話を聞いてみると安田さんには農園を経営される際に大切にされている3つのこだわりがありました。まず1つ目に「土へのこだわり」です。農薬の使用を極力抑え、落ち葉を集めて堆肥を作り、籾殻・米糠・糞堆肥・石炭などの有機肥料を畑に混ぜ込むようにしています。

 2つ目に、「多品目少量栽培」です。やすだ農園では年間50品目と、とても多くの種類の野菜を栽培しています。以前は現在より多くの市場出荷が行われていたということで、少ない品目で大量生産をするという手法が取られていました。しかし、相次ぐ相続による土地減少により大量生産ができなくなったことで、多品目少量栽培という栽培方法にたどり着いたそうです。

 この栽培方法により多種多様な野菜を育てることで、庭先直売において一定量の商品を提供することが出来ます。これが東京という土地において、お客様がスーパー感覚で新鮮な野菜を購入できる場所を提供することに繋がっているのではないか、と安田さんは考えます。

庭先直売

 そして最後に「露地栽培」です。野外の畑で栽培する露地栽培には気候や虫食いなどとやはりデメリットが多いですが、旬の味が分かることに大きなメリットを感じているそうです。「この時期だとこの野菜だよね!」と四季折々の旬の野菜を皆さんに知ってもらえるという強みを露地栽培は持っていると安田さんは言います。

糖度13.2度とフルーツレベルの甘さを持つスイーツキャベツ。安田さんにお勧めしていただいた回鍋肉にして美味しくいただきました。

いろいろな販路!

 手間暇かけ育てた農作物、その新たな販路開拓のためやすだ農園ではいくつかの取り組みが行われています。まず、ネット販売BASEの活用です。「一般的な販売方法だとお客様の生の声を聞くことは難しいけれど、ネット販売は“ライブ配信”などを通じてお客様とやりとりできる」と直接お客様とやりとりすることを可能にする点に安田さんは大きなメリットを感じています。

 加えて、「農業女子プロジェクト」という取り組みにも参加されています。「農業女子プロジェクト」とは、女性農業者独特の知恵を様々な企業の技術・ノウハウ・アイデアなどと結びつけ、新たな商品やサービス、情報を創造し、社会に広く発信していくためのプロジェクトです。このプロジェクトを通じ、マルシェの参加や企業とのマッチングなどと販路が増えたそうです。このようにやすだ農園は、日々変化する社会に対応しながら新鮮で美味しい野菜をより多くの消費者に届けることができるように取り組んでいます。

安田さんは、これから加工品にも力を入れていきたいとおっしゃっていました。特に栄養豊富なことで有名なビーツに注目しているそうです。

安田さんの目指す、1つの会社としての農園

 皆さんは、GAP(農業生産工程管理)をご存知でしょうか?GAPとはGood Agricultural Practiceの頭文字をとったもので、農業において、食品安全・環境保全・労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組みのことです。2020年オリンピック・パラリンピックにおける食料調達基準とされているということもあり、現在このGAPという取り組みが農業関係者間で話題を呼んでいます。

 やすだ農園は現在、このGAP認証にも挑戦しています。具体的には、まず帳簿の作成や作業記録の作成、作業場の整理整頓といった活動を行います。そのうえで、調査機関の審査を受け、GAPの認証を取得します。

 やすだ農園がGAP認証を取得する目的は、これを契機に農業スタイルを改めて見直すことにあります。農園の周囲は宅地のため、日頃から多くの目にさらされています。このため、GAP認証を取得するなかで資材や作業を整理しなおすことによって、誰が見てもおかしくない1つの会社のように管理の行き届いた農地を目指しているのです。また、近隣ではGAPを取得している農家は多くないため、差別化というメリットもあるかもしれないと考えているそうです。

 旬の食べ物は、夏には体を冷やす、冬には温めるといったように人間の体に良い働きをもたらします。また、旬の食材は栄養価も高く美味しさも格別です。

 四季・旬を考え食事をとることが減ってきている現代社会、やすだ農園の四季折々の旬野菜を食べることで、自然の恵みや四季の変化を改めて感じる良い機会になるのではないでしょうか。

庭先直売前にある掲示板。是非チェックしてみてください。

やすだ農園 プロフィール

森 柚香

アグリドットトーキョー編集部。津田塾大学学芸学部英文学科所属。大学入学後、農業とはあまり関わりの無い生活を送っていましたが、「農業サークルぽてと」に入会したことをきっかけに農業に興味を持ちました。趣味はダンスで、大学では「ぽてと」以外にベリーダンス部・ラーメン同好会に所属しています。アグリドットトーキョーでは今までの知識も活かしつつ、新しいことをどんどん吸収していきたいと考えています。

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